「灯-tou-」のあとがき
【まえおき】
 皆様どうも、このコーナーではお久しぶりです。じょじろ~です。
 作品を作り上げたことに対する後悔はありませんが、多少あいまいな設定で漫画を描いてしまった、という後悔。そのせいで、構成に関してちょっと説明が必要だと感じあとがきを書くことにしたのですが、書いてみるとそれ以外にも色々浮かんできて思いのほか長くなってしまいました。ちょっとだけね。


ちなみに、

・なんでこんなスタイル(2部構成)で描いたのか

・この物語の原点について

・今回この物語を漫画にした理由

・構成上の難点(自分の場合)

・描き方の原点回帰と今だから描けたもの

▼以下、ネタバレ含みます

・中途半端な「サイレント」にしてしまった理由

・今回の舞台設定

・大輝と千歌の想い

・作品に込めたかったもの

・蛇足←


 こんな順番で話したいと思います。上のリストはそれぞれのリンクになっているので読みたいところだけ読んでいただいても大丈夫です。

【まず初めになぜ2部構成になったのか】
 これは本のあとがきでも書きましたが、14年前描きたかったサイレント漫画と今描くにあたって作品に込めたいもの、それを考えた時にそれらを一纏めにするのは難しいと感じ2部構成という形になりました。そしてただ描くのではなく、その2部構成に2つの『対比』という意味合いを込めました。亡くなっている千歌と生きている大輝、それぞれ存在する世界の違いを音のありなしとして、というのが一つ。相手のこれから先の幸せを願う千歌と過去に捕らわれ後悔を拭えない大輝の気持ちの「差」として、というのがもう一つです。
 ちなみに、読後感を考えると千歌の物語を後ろに持っていく方がいいと友人にも言われました。自分でもそう感じたんですが、メッセージを込めたのが大輝の物語なので、今回はこの構成にしました。

 【この物語の原点】
 この物語の始まりは、14年前、とあるミュージックビデオを観たのがきっかけでした。
内容は全然違うんだけど、その時その映像から流れる切ない感じにすごく刺激を受けて、こういう雰囲気の漫画を描いてみたいと思いました。
 その映像には台詞はなく音楽が流れるだけのもの。サイレント漫画にしようと思ったのはその影響だと思います。ただ、考えた話は心理描写が多く、その当時の自分には音無しで表現できる気が全くしなかったので思いついたまま封印していました。
 その後、この話を完全に忘れることはありませんでしたが、「今はまだ描けそうにないな」という気持ちが常にあり、そのまま封印し続け、また構想を膨らますこともありませんでした。
 この手の話って今でこそ色んなところで見かけるので、そういう意味では思いついた時に形にしなかったことを少し後悔しています。

【その封印し続けた物語を今回漫画にした理由】
 十余年の時が経ち、描ききる自信をつけいよいよ作品創りに!
 …という訳ではなく、今回描くことになったのは2つ理由があります。

一つは、イベントが迫っていたこと。
2019年春のイベントで間に合わなかった漫画を同年夏のイベントで出す予定でしたが、想像を絶するほど進みが悪く7月半ばでほぼほぼ間に合いそうにないと感じ、何か別の手を打たなきゃと思っていました。あと半月くらいで用意できるもの…。描けるページ数のことを考えた結果、もともとそんな長い話ではなかった、この話に白羽の矢が立ちました。“出来れば自信をつけてから形にしたい”とそれなりに温めていた話ではありましたが、他のネタも浮かばなかったので…。

もう一つは、描いてみないとわからない、という事。
この十数年、ずっと「描けそうにない」と思ってきて、じゃあいつ描けそうになるのかと考えた時、一度描いてみない限りは、この先も「描けそうにない」ままだと思ったからです。2年前に描いた恋愛漫画も、描くまでは『自分には無理』と思ってましたから。でもうまくいかなかったにしても描けば何かしら得るものはあります。恋愛漫画を描こうと試行錯誤した結果、色々なことに気づき、漫画を描くことがより好きになれたのも事実です。(その分、自分の中の表現したいハードルが上がったため更に遅筆になった気もしますが…)

そしてイベントが夏なのに対し、この物語も夏の物語だったというのも後押ししたきっかけでした。


……ただ、あとがきを読んでる時点でお気づきかとは思いますが、結果的にその夏のイベントに間に合いませんでした(おい)
結果、冬の足音も聞こえ始めたこの11月のイベントで出すことに。。
いつも有言不実行で謝罪のレパートリーがもうありません、、

【今回の構成は失敗?】
 いつもは描き終わった瞬間に達成感に満たされるのですが、今回は特に何かに満たされることもなく「あ、終わった」って感じでした。というのも今回の漫画の構成は16ページの漫画を同じ絵で2パターン用意するというものでして、中身が描き終わった後は2パターン目の構成を調整するというちまちまとした事務作業だったからです。(主にセリフ入れ)
 描き終わった瞬間に完成する従来の流れとは違い、事務作業を終わらせないと完成しない状況だったのでむしろめんどくささを感じていました。また今回の話は内容はともかく構成において自己満な形だと思っていたので、頑張って創って誰からも評価されないという不安も達成感を感じられなかった一因だったと思います。その後、2部構成の中身を完成させ、表紙も描き切った頃にようやくじわじわと達成感が沸き起こってきました。読んでくれた友達数人からは今のところはこの物語を褒めていただいたりもしているので一先ずほっとできました。大抵描けば満足する自分にとって他人の評価が達成感に影響するのは珍しいです。人に読んでもらう以上、読み手を意識しない作りというのは読んでもらうときに心臓が悪いなと改めて感じました。描くのはめんどくさいし、評価も怖い、これは前回の作品とは真逆の感覚なので大きな反省点だと感じています。
 あ、それと達成感が薄い原因がもう一つ。これまでの作品創りでは毎回〆切ギリギリに追い込まれて何とか完成させてたから、間に合った喜びが達成感の多くを占めていました。でも今回は8月のイベントの時点で7、8割完成していたので今回の11月のイベントの2か月前には完成してました。そのおかげで印刷代に割引が効き、いつもできない少し凝った装丁ができたので結果的には全くOKなのですが、追い込まれたところからの完成というスリルがどうやら自分には最高のスパイスになっていたようです。うん、ヤバい人だ。。


【ちょっとした原点回帰と今だから描けたこと】
 今回漫画を急ピッチで描くことになった時、少しでも作業工程を減らすためトーンをなるべく貼らないようにしようと思いました。かつてアナログで漫画を描いてた頃はトーンを貼るのはめんどくさいし貼れば貼るだけコストがかかるしで、なるべくペンだけで表現しようと試みていました。デジタルに移行してからはトーン作業が楽な上に貼りたい放題なのですっかりトーン漬けになってしまいました。トーンを貼ると絵が映えるんですよね。画力を補うものとして使っていたのが、今では画力を誤魔化すためにガチャガチャ貼ってる感じになってしまい自分が描きたい絵ではなくなってきている気がしました。そういった理由も含めて今回はなるべくトーンの使用を控えました。控えすぎるとかえって描くのに時間がかかるんですけどね。ただ一つ不安だったのは、トーンを控えると想像以上に味気なくなってしまうこと。実際にアナログ時代にはそれを感じていましたが、そこは以前ほどではないですが、やはりその通りで、やんわりと指摘されたこともあり背景を描き足したりしました。ただ同時にペンだけで描けるスキルをもっと上げたくもなりました。
 一方、少し前の文章で「思いついた時に形にしなかったことを少し後悔」してると書きましたが、今描いたからこの程度まで描けたとも思っています。それは当時の自分では描けなかっただろうと思える部分があるからです。画力に関してもそうですが、ラストの回想シーンに関してはこの十余年の間に経験したことや人から聞いたこと、見てきた風景などが大きく影響しているので物語を思いついた当時に描いていたとしたらこれらの描写はおそらくもっと簡素なものになっていたと思います。
 ただ無駄に時間を浪費していたわけではなかったんだなと気づけるのは漫画を描くという行為の醍醐味の一つだと最近は思います。(それだけ歳を取ったって事なんだろうけど…)
 経験をダイレクトに、そして楽しく形にできる「漫画」が趣味で良かったなあとつくづく思います。



※次ページからは話の内容に触れていきますので、読んでない人にはネタバレになります※



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