裏話その6 特殊なコマの配置
この項ではちょっと技術的な話を。ただ上手く伝わるように説明できるかどうか…わけわかんないかもしれませんが、その時は読み飛ばしてください(笑)

最近の漫画を描く楽しみの一つとして、”試したくなること”があります。「ここはトーンをかぶせて貼ったほうがいいかも」とか「コマ枠の外側をデコってみよう」とか…。無意識のうちに『こう描かなきゃいけない』と思ってしまう癖が数年前まであったので、今は逆に『思いついたら何をどう描いてもいい』と意識しながら描いています。印刷所が「これはちょっと…」と言ってくる描写やごちゃごちゃし過ぎてて読めない、ってならなければ基本的にOKだと思ってます。
とは言いつつこの項でお話しする”試したくなること”として実際にやった事は読みづらくなる可能性が十分にありましたので、多少ためらいもありましたが試したい衝動に抗えず実施してしまいました(笑)
その試したことというのは”コマの特殊な読み進め方”です。ではそのページをご覧ください。
左のページはイメージの世界で動き回っていたカンナが、現実世界に意識が戻るシーンです。
このページにおいてカンナの顔のアップのコマと、鳩時計のコマどちらが1コマ目、2コマ目だと思いますか?
描いた時は便宜上、カンナのほうを1コマ目、鳩時計を2コマ目としてフォルダ分けして描きましたが、実際これは明確な1コマ目、2コマ目という定義はありません。言い換えるならば鳩時計のコマはカンナの1コマ目の補足コマといったところでしょうか。1コマ目、2コマ目と定義してしまうとその順番に読むのが正当な流れになってしまいますが、そう読んでほしくはなかったのです。この補足コマというのは卒業アルバムでいうところの右上の別枠なので(下図参照)、漫画で言うなら1コマ目の”要素”という位置づけになります。

ただ、1コマ目の枠内に完全に入れてしまうとこの部分が見えづらくなる(目立たなくなる)のであえて1コマ目から少しはみ出させて「コマ」として描きました。でもただ単にコマとして描いてしまうと1コマ目、2コマ目という順で読んでしまう可能性があるので、希望としては「補足(要素)」と「コマ」、そのちょうど間くらいの存在感にしたかったんです。
そこで意識したのが”目線移動”です。言葉だけ聞いてもどういうこっちゃ?だと思うので実際、どう読み進めて欲しかったのか図入りで説明します。
このページを開いた時にまず一番最初に目に入るのが一番大きく描かれたカンナの顔だと思います【
顔全体が目に入った時、その顔(正確には額)にかぶせるように大きく描いた「ポッポー」という擬音も同時に目に入ると思います【
そのまま自然に「ポッポー」という文字を読んでいくと目線が右に移動し「はっ」という文字が目に入ります【
そしてそのすぐ下にある「ポッポー」が目に入り、補足コマにたどり着きます【
ここまでがページを開いた時に自然の流れで目線移動してほしい部分で、あとは1コマ目の左側のセリフを読んでもらえればいいなと思い、このような構図になりました。先に左側のセリフに目が行かないように後ろを歩く子供のセリフは小さめにしカンナの髪のうしろに配置したり、くまさんのセリフは少しカンナの顔から離したりしました。
果たして意図通りに読んでもらえるのかどうか、不安半分、興味半分で描きましたが皆様はどうだったでしょうか?単に読みづらかっただけだとすれば、まことに申し訳ありません…。
でもこういうあえて普通じゃない流れを作ってみるというのは考えてると非常にワクワクするもので、また上手くいけば表現の幅も広がるので漫画を描いていて楽しい部分ではあります。
ただ実は現時点でこのシーンをどう読んだか誰にも聞いてません…。描き終わると満足しちゃう性格なので、この裏話を書くまで忘れてました…。読んでくれた人と話す機会がある時に思い出すことがあったら聞いてみたいと思います。
裏話その7へ
すみません、もう少し続きます…。